事業再構築補助金、審査項目を読み解く

募集要領の事業計画作成における注意事項に「事業計画書の具体的内容については、審査項目を熟読の上で作成してください。」としっかり記載されています。つまり審査項目を外したらだめですよということをわざわざ書いてくれているのです。審査項目として5つの項目が記載されてますが、それらについて記載すべき内容を読み解いてみましょう。

(1)補助対象事業としての適格性

「4.補助対象事業の要件」を満たすか。補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%((【グローバル V 字回復枠】については 5.0%))以上の増加等を達成する取組みであるか。
⇒この2つはついては絶対条件として満たさなければならないところです。特に申請書の一番最初に記載する「補助対象事業の要件」を満たすかについては、ここで満たしていないと思われては手の打ちようがなく最後まで読んでももらえません(多分)。曖昧な要件についてはなぜ満たすかということを説明する記載が必要です。事例の参照やエビデンス、見解を含めてしっかりと記載しなければなりません。

(2)事業化点

① 本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
⇒事業実施のための体制(人材、事務処理能力)については人材の資格や能力も含めて記載する必要があります。また事業遂行にフォローが必要な場合にはそのフォロー体制も記載しておく必要があります。事業を実施可能を証明する必要があります。財務状況についてはローカルベンチマークを入力すると出てくる財務分析結果シートを確認し、問題点だと思われる部分については理由や改善手だてを記載しておかなければなりません。資金調達についても同様、本文中にどのようにして資金調達をするか、融資については金融機関と同意は取れているかを記載する必要があります。

② 事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。
⇒市場ニーズについてしっかりと記載するように書かれています。ターゲットを明確にして、ターゲットが存在する市場がしっかりと存在しているのかを調査して事業を行うように記載されています。競合他社の動きを通じて市場ニーズを把握しなさいと書いてあります。ここがしっかりと調査されていないと事業化しても危ういと判断されます。下記のアドレスでエビデンスを集めてください。
経産省のおすすめはこれです。統計分析ツール「グラレスタ」のURL:https://mirasapo-plus.go.jp/hint/14583/
おすすめ:https://chosa.itmedia.co.jp/
政府系、使うのに慣れが必要:https://www.e-stat.go.jp/
経済に関するレポート:http://www3.keizaireport.com/

③ 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か。
⇒補助事業を実施することもいいことばかりではなく、当然取り組まなければならない課題もあるのが当然です。それらの課題を明確にして対応方法を検討して取り組まなければ事業として危ういということです。想定される課題を箇条書きにし、それに対しての対応策をしっかりと本文中に記載しましょう。補助事業の成果(出来上がった製品、サービスなど)が価格的・性能的に優位性や収益性を有しているかについても、本文中に文章としてしっかり記載しましょう。遂行方法、スケジュールが妥当であるとわかりやすく表現するためにも、工程表・ガントチャートなどを用いて表現しましょう。

④ 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。
⇒費用対効果が高いかは売上構成比や付加価値額である程度担保されていますが、ここもしっかりと記載しておく必要があります。費用対効果が高くなる理由として考えられることとして現状資産の活用です。だから自社の強みを活用する内容になっているかとここで書かれています。ここで強みと全く関係のない補助事業は危ういということになってきます。儲かりそうだからやるだけでは加点は厳しくなります。さらにここで既存事業とのシナジー効果を期待と書かれています。既存の事業モデルの一部を活用することにより効果的な取り組みになっているかを確認する必要があります。

(3)再構築点

① 事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。
⇒思い切った大胆な再構築を行うものであるかというのは個人の感覚によるものでしょうが、補助事業計画名はインパクトのある表現を考えたほうがよいでしょう。

② 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。
⇒これは事業環境の部分にしっかりと記載しておく必要があります。

③ 市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか。
⇒上の④と被ります。それくらい重要度の高い項目と言えます。

④ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。
⇒地域のイノベーションに貢献ということについては、地域発のということになると思います。~の活用により、~を通じて地域のイノベーションに貢献できるの一文を入れたいところです。

(4)政策点

① 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
⇒テクノロジーの部分です。重要なテクノロジーがあれば、その説明と活用をしっかり記載しておいたほうが良いです。

② 新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。
⇒先の費用対効果と被りますが、V字回復が見込める事業のほうがより加点されやすいということでしょうか。

③ ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
⇒申請がグローバル枠でないとしても将来の展望の部分にははグローバル市場を意識した内容があるとよさそうです。グローバル展開が見込まれるならばですが。当然それを裏付けする差別化内容の記載が必要です。

④ 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。
⇒補助事業が地域密着型であればこの内容については将来の展望で必ず記載すべきところだと思います。

⑤ 異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。
⇒事業化に際して他の事業者との協力や連携があれば、ここについて強調しておくとよいです。生産性や経済波及効果についての記載も行います。

(5)加点項目

【令和3年の国による緊急事態宣言の影響を受けた事業者に対する加点】
① 令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していること。
② 上記①の条件を満たした上で、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ること。
※ 加点項目については、エビデンスとなる添付書類を提出し、各要件に合致することが確認できた場合にのみ加点されます。
⇒この加点については当てはまった場合のみ加点となります。石川県は令和3年の緊急事態宣言の影響を受けている事業者ということが条件になるのかなと思っています。協力金は出ていないため。ただし業種はかなり狭められることになります。

まとめ

かのように事業再構築補助金事業計画については必要項目に沿って網羅的に作成することは最低限の事業件であり、さらに審査項目を十分に意識した事業計画に仕上げることが重要になってきます。
補助金の審査は、事業計画を基に行われます。採択されるためには、これらを織り込んだ合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要です。